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入管情報2024.07.15

育成就労制度について

入管情報2024.07.15

外国人の育成支援

これまでの技能実習制度が改められ、技能実習法が改正されました。詳しいことは、今後、主務省令で定められますが、概観してみたいと思います。

育成就労制度とは?

育成就労制度は、外国人労働者を日本に受け入れる新たな在留資格制度です。この制度は、2024年6月14日に成立した「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」に基づいて導入されました。育成就労制度の目的は、これまでの国際貢献から、特定技能1号の人材を育成し、彼らを日本の労働市場に積極的に受け入れることになり、制度が実態にあった明確なものとなりました。

育成就労制度成立までの経緯

育成就労制度は、2022年12月から2023年11月にかけて開催された有識者会議で議論が進められ、最終報告書が作成されました。その後、2024年2月の関係閣僚会議を経て、3月15日に政府が閣議決定し、6月14日に国会で可決されました。

育成就労制度のポイント

職業紹介の独占

育成就労制度では、監理支援機関が職業紹介を独占し、外国人労働者の雇用先とのマッチングを行います。監理支援機関は、外国人労働者の適正な雇用環境を維持するために必要な支援を提供し、定期的な監査を行います。

雇用許可制類似の制度

雇用する企業は、育成就労計画を作成し、認定を受けることで外国人労働者を受け入れます。育成就労計画には、労働条件、育成内容、監督体制等が詳細に規定されており、これらの条件を満たす計画のみが認定されます。

計画による活動規律性

育成就労計画に基づく活動が求められ、労働者は計画された範囲内でのみ就労し、計画外の業務には従事できません。育成就労計画の変更には、監理支援機関および関連する行政機関の承認が必要です。

日本語能力の習得

労働者は、スタート時点でN5レベル、終了時にN4レベル、特定技能2号に移行する際にN3レベルの日本語能力を習得することが求められます。

職種の一致

特定技能1号と同じ職種で働くことが求められます。これにより、育成期間終了後に特定技能1号にスムーズに移行できます。

転籍の容易化

転籍がしやすくなりますが、転籍には一定の制約があります。転籍は、労働者の希望ややむを得ない事情がある場合に限り認められます。転籍先でも新たな育成就労計画の認定が必要です。

育成就労制度の受入れ対象分野・職種・人数枠

育成就労制度は、特定技能1号への移行を前提とし、特定技能の対象分野から一部が指定されます。具体的な対象分野は今後の省令で判明しますが、農業や漁業などの労働者派遣が認められる分野も含まれる可能性があります。

一方、特定技能制度では新たに自動車運送業や鉄道、林業などが追加され、育成就労制度でも同様の分野での受け入れが可能になると考えられます。各産業分野において人数枠が設定されることも予想されます。

育成就労制度における転籍の柔軟化

育成就労制度の特徴として、転籍(育成就労先の変更)が一定の要件の下で認められる点が挙げられます。「やむを得ない事情がある場合」と「本人の希望による場合」の2パターンがあり、特に「やむを得ない場合の転籍」の範囲が拡大され、手続きも柔軟化されます。

転籍する際には、新しい育成就労先での育成就労計画の認定が必要であり、転籍先事業所の適正性も審査されます。転籍前の受入れ機関が負担した初期費用等について、転籍先の企業が適切な補償を行う制度も検討されています。

外国人労働者の監理・支援・保護についての変化

監理団体は「監理支援機関」に変更され、許可要件が厳格化されます。外部監査人の設置や職員の配置、財政基盤、相談対応体制等の要件も厳格化され、機能が十分に果たせない監理団体は許可されません。また、支援業務を他に委託する場合の委託先を登録支援機関に限ることが求められます。

従来の外国人技能実習機構は「外国人育成就労機構」に改組され、特定技能外国人への相談援助業務も行います。労働基準監督署や地方出入国在留管理局と連携し、法令のコンプライアンスを高めることが期待されています。

受入れ機関と送出機関の要件

受入れ機関側の要件として、人材育成の観点から受け入れ人数枠を適正化し、特定技能制度における分野別協議会への加入が要件とされる見込みです。優良な受入れ機関には、申請書類の簡素化などの優遇措置が講じられます。

送出機関については、原則としてMOC(二国間協力覚書)締結国からのみ受入れを行い、悪質な送出機関排除に向けた取組が強化されます。送出手数料の透明化等により適正な負担ルールが設けられる見込みです。

外国人の人材育成のあり方

育成就労制度は、対象となる外国人ごとに育成就労計画を定めた上で計画的に特定技能1号の技能水準の人材に育成することを目指す計画型の在留資格です。特定技能制度の「業務区分」の中で主たる技能を定めて育成就労計画を作成し、その計画に基づいて育成・就労を行います。

日本語能力の向上策

育成就労制度では、以下の日本語能力の要件が定められる見込みです。就労前には日本語能力試験N5合格または認定日本語教育機関において相当講習を受講することが求められます。1年目の終了時には日本語能力試験N5合格、技能検定試験基礎等の合格が必要です。3年目の終了時には日本語能力試験N4合格、技能検定試験随時3級等または特定技能1号評価試験に合格することが求められます。

移行スケジュール

政府は2024年3月15日に技能実習制度の廃止と新制度「育成就労」を新設する出入国管理法などの改正案を閣議決定しました。改正法の施行は2026年から2027年になると予想されます。施行後も制度の運用状況について不断の検証と見直しが行われる見込みです。

育成就労制度の課題と展望

育成就労制度には、労働者の保護や適正な雇用環境の維持が求められる一方で、転籍の柔軟化や計画の変更など、新しい制度に適応するための課題もあります。今後の運用においては、制度の見直しや改善が期待されます。

労働者の保護

労働者の権利を守るために、監理支援機関や外国人育成就労機構が中心となってサポートを提供し、適正な労働環境の確保に努めます。

企業の対応

受入れ企業は、新制度に適応するために、育成就労計画の作成や転籍手続きの整備が求められます。また、労働者の日本語能力向上や技能育成に対する支援も重要です。

国際協力の強化

送出国との連携を強化し、適正な人材の受け入れを促進するために、二国間協力覚書(MOC)の締結や送出機関の適正化が進められます。

まとめ

育成就労制度は、日本の労働市場における人材不足を補い、特定技能1号の人材を育成するための新しい制度です。制度の適正な運用と改善により、外国人労働者と日本の受入れ企業双方にとって有益な環境を整備することが期待されています。